なぜ自分のフランス語は分かってもらえないの?
「なぜ私が話してもフランス語っぽく聞こえないんだろう?」
「きちんと正しく話しているつもりなのになぜ何度も聞き返されるんだろう?」
「私の言っていることはあまり真剣に聞いてもらえてない気がするのはなぜだろう…」
生徒さんたちからよく聞くフランス語でのコミュニケーションの悩みです。
フランス語の発音は決して簡単なものではありません。
きちんと発音の勉強とトレーニングをしたことがない場合は、フランス人相手に通じなくても当たり前かもしれません。
ではなぜフランス語を分かってもらえるように正しい発音で話すのは難しいのでしょう?
それは、当たり前のことなのですが、フランス語が私たちの母語である日本語とはかけ離れた言語だからです。
そもそもフランス語と日本語では発音のリズムも違えば、アクセントの種類やイントネーションの取り方も違うのです。
…と言っても何のことを言っているのかわからないかもしれません。
簡単に言うと、言語としての「メロディー」が違うのです。
(専門用語ではその言語の「メロディー」のことをプロゾディーと言います)
例えば海外や空港で、遠くにいる人たちが話していて、その人たちのことを見なくても、話の内容も分からなくても「あ、日本人だ。日本語話してる!」と思うことありませんか?
それは日本語の「メロディー」を聞き分けることができているからなのです。
フランス語と日本語では、まずその「メロディー」が全く違います。
ということはどういうことかと言うと、どんなに正しい1音1音の発音を勉強しても、フランス語の「メロディー」を習得しなければいつまで頑張ってもフランス語をフランス語らしく話すことはできないということなのです。
しかも、そのフランス語の「メロディー」の次に大事な1音1音の発音に関しても、残念なことに、フランス語にある音の約60~70%は日本語にはない音だと言われています。
極端なことを言ってしまうと、
発音を勉強し、練習しなければ、いつまでたっても通じるフランス語を話せるようにはならないのです😱
ちょっと間違った思い込みから抜け出そう
発音やリスニング力、スピーキング力を身につけるには、
①「とにかくその言語を聞いて聞いて聞きまくるのが良い!」
②「恐れず外に出て、またはネットなどで話す相手 (ネイティブ) を見つけてとにかく会話!話して話して話しまくるのが良い!」
上記①も②も、よく聞く仮説です。
両方とも完全に間違ってるわけではもちろんないのですが、本当に①や②を実行しているだけで発音やリスニング力、スピーキング力が身につくものかちょっと考えてみましょう。
まず①の聞けば良い、という考え方は、特に大人になってからの言語習得にはそれだけでは足りません。
たくさんフランス人が実際に話しているのを聞いたり、テレビ、ドラマ、映画、動画、歌などを聞くことは、フランス語に慣れると言う意味では良いことではあります。
ただ、「この人がこういう風に話しているから真似して私も言ってみよう!」と思っても、
大人の、母語に合わせて出来上がった耳には実際の正しい音が聞き取れていないことが多いし、母語に合わせて出来上がった発音器官の筋肉には正しく発音できないことが多いのです。
では②の考え方はどうでしょうか。
この考え方も、文法や語彙などの語学力をアップするためや、フランス語を恐れずに話す度胸や瞬発力をつけるにはとても良いことだとは思います。
でも果たしてそれだけで発音は良くなり、聞き取る力、話す力もつくものなのでしょうか?
この説に関しては、例えば10年以上、長い期間フランスにすでに住んでいるがフランス語らしいフランス語が身についていない方や、フランス人と結婚したり一緒に暮らしたりして長いのにカタコトっぽいフランス語を話している方が結構いることを思うと、やはりこれだけではダメなのではないかと思わずにはいられません。
なぜかは一概には言えないとは思いますが、ナチュラルにコミュニケーションをする場において一番重視されるのは、相手の言っていることが分かる、ということで、話し相手の発音を直したりフランス語を教えたりすることではないからなのではないかと思われます。
さて、では、①も②も悪いことではないが、発音をよくするにはこれだけでは足りないのならば、一体どうすれば良いのでしょうか。
①も②も、その前段階として、フランス語の発音のテクニックやコツを勉強し、トレーニングをして聞き分けられる耳を作り、理解して訓練して正しい発音で話す癖を少しずつつけていくことが大切なのです。
J’ai mal à la tête. をフランス語らしく言ってみよう!
この記事に詳しくは書きませんが、フランス語がフランス語らしく聞こえる発音のルールのようなものがいくつかあります。
試しに、
「頭が痛い。」という意味の、
J’ai mal à la tête.
をフランス語っぽく言うことにトライしてみましょう。
ちなみに、あまり日本人にとって難しい音の少ない文を選んでみました。
この文の読み方をカタカナで書いてみると多分、(参考書などにも) 以下のように書かれることが多いと思います。
J’ai mal à la tête.
ジェ マル ア ラ テットゥ
これを日本人が普通に読むと、きっとこのようになります。
では、フランス語らしい「メロディー」と発音でこの文を言ってみるとどうでしょうか。
強いてカタカナで書いてみるならば、
J’ai mal à la tête.
ジェマララテーッ
「メロディー」は、図にしてみると、
という感じでしょうか。
このように違いを書いてみると大したことではないのですが、実は、日本語のカタカナ風発音から、フランス語らしい正しい発音にするには、
リズムを変え (音節数、拍数の違い)、
アクセントを変え、
イントネーションを変え、
さまざまなフランス語らしい発音のコツを盛り込んでいるのです。(音のつながりや音の消去etc)
ここでは「メロディー」の次の段階の、個々の音の違いなどは説明しませんでしたが、これだけでも何となくフランス語らしく発音するためには理解と練習が必要だということはお分かりいただけたのではないでしょうか。
そしてフランス語の発音は簡単ではないかもしれないですが、反対に、ルールを理解し、トレーニングさえすれば、大人になってから習い始めても、良い発音を習得することは可能だ、ということでもあるのです。
Mamiko Nagamatsu