20%値上げ!? Navigo&メトロの切符について

パリ暮らし

By ドメストル美紀

この一年のフランスの物価上昇率には本当に参っています。
INSEE(フランス国立統計経済研究所:インセ)によると、この一年で、食料品全体の価格は13.2%上昇したということですが、いやいや、そんなものではないでしょう、というのがわたしの生活実感です。

そんな中、「ブルータス、お前もか」と凍てついてしまったのが、公共交通機関の値上げのニュース。Navigoのマンスリー・パスは75ユーロから90ユーロへと、一機に21%も値段が引き上げられる可能性が浮上、併せてメトロの切符の値段も、一枚1.90ユーロが2.30ユーロになるかもしれないという。

ところで、このNavigoというカードはPasmoやSuicaのようではあるものの、似て非なるものでもあり。複雑なルールを知らないと落とし穴に嵌るのでご注意を。この機会にしっかり理解しませんか。

Exif_JPEG_420

まず、Navigoにはいくつか種類があるところからご説明しましょう。Suicaなら一枚ですべてができるのに、ここからして複雑でしょう?

Navigo


ザ・Navigoといえば、定期型のNavigo。毎月1日にスタートします。月の中ほどで「この先しょっちゅう電車使いそうだから、明日からマンスリー・パスにしようかな」と思っても、そうはいかない。また、みんな一斉に1日スタートなので、月初めはNavigoの購入のために発売機前に長い列ができます。(少し前から購入可能ですし、オンラインで購入できるのに、ね)
ウィークリー・パスも、月曜日スタートの日曜日終わりという縛りがあり、例えば、水曜日から火曜日まで、ということはできません。この融通の利かなさがフランス的でもあり。

Navigo Liberté

次にNavigo Liberté。こちらは、使った額だけ銀行引き落としとなるというシステムです。ペーパーレスを奨励すべく、メトロの切符、紙のものは一枚1.90ユーロのところ、Navigo Liberté だと1.49ユーロと割安になります。紙バージョンのカルネ(回数券のようなもの。10枚束で販売するので一枚だけ買うよりも割安になる)ですら一枚あたり1.69ユーロですから、Navigo Libertéの方がお得です。バスの乗り換えだけでなく、バス・トラムに乗り、メトロやRERへの乗り換えても、一回分(1.49ユーロ)のみのチャージとなります。紙の切符だと、バス・トラム→メトロ・RERの乗り換えは二回分取られることを考えるとお得ですよね。また一日7.5ユーロ分以上使うと、自動的に「一日乗り放題切符」に切り替わり、7.5ユーロ以上はチャージされない、等なかなか優秀。

……だと思うでしょう? ところが、このNavigo Libertéは、パリ市内のみという縛りがあります。わたしが住むベルサイユや、その他パリ近郊はNavigo Libertéのカバー圏外。それを知らないで、パリ市内からNavigo Liberté を使ってRER(郊外電車)に乗り、ベルサイユで降りると不正乗車扱いとなり、罰金を払わされます。乗り越し清算はできないと思った方が無難かと。(何事もケースバイケースのフランスですので、断言はできませんが、わたしの知っている方は、罰金刑に処されて、本当にお気の毒でした)
皆様もお気を付けくださいね。

メトロの切符について

先ほど、紙のカルネについて言及しましたが、紙のメトロ切符は、徐々に姿を消しています。メトロの改札口にも、“Le carnet de t+ en carton, c’est fini!” という大きなステッカーが貼られているのをよく見かけるようになりました。こちら“c’est fini!”と勢いよく複合過去で言い切っていますが、実際には、まだ終わってはいません。10月の時点ではパリ市内の180駅で紙のメトロ切符の販売を終了していますが、メトロは303駅あるらしいので、今も紙の切符を販売している駅は結構あります。ただ、2023年度は引き続き紙の切符の販売箇所を減らしていく計画なことは確か。

一方、紙の切符がいつまで使えるのかは不明。今言えることとしては、郊外電車に関してはペーパーレス化への取り組みがバラバラのようですので、紙の切符は当面使えると思われます。

複雑すぎて、もうおなか一杯ですよね。でももう一つだけ。

Navigo Easy

Navigo Easyというカードについても言及しておきましょう。ご旅行でパリを訪れる方、滅多にメトロを使わないという方には便利なカードです。こちらは2ユーロでカードを購入もしくはスマホにアプリをダウンロードして使います。駅もしくはアプリにて、必要な切符を購入するとカード/アプリに記録され、あとは普通に改札でタッチして使います。

ややこしすぎる!


こうして、わたしの手元には、通常のNavigo (頻繁にパリに出るとき用)と、Navigo Liberté (なぜかベルサイユ市内のバスはメトロのt+ の切符なのです)と、ベルサイユからパリに行くための紙の切符のカルネがごちゃごちゃあるわけです。ついでに言えば、息子たちのために買ったNavigo Easyもどこかにあるはず。Navigoは、なぜ、SuicaやPasmoのように、もしくはイギリスのOyster カードのように、もっと自由自在に使えるようにできないのでしょう。
いや、この不便さがフランスであり、このややこしさこそ愛すべきフランスなのです。

そう自分に言い聞かせていますが、20%+の値上げだけは愛せません!

付記……結果としては

このブログを書いたころは、メディアでもNavigoの値上げ率に関して、メディア・政界で喧々囂々と批判されていました。それが功を奏したのか、値上げ率は、少し下がりました。
1月1日より、Navigoのマンスリーパスは+11.8%の84.10ユーロに、メトロの切符も、紙版、Navigo Liberte版ともに、+13.4%(値段はそれぞれ、1.91ユーロと1.69ユーロ)となりました。

一方で、バスの車内で切符を購入するのは、+25%の2.5ユーロに、Navigoのウィークリーは、+31.6%の30ユーロに。強弱をつけた値上げとなっています。

はじめに20%+の札をちらつかせ、でも結果としてはそれほどでもなかったから、「ああ、よかった!」。
……なんて思うほど初心(うぶ)ではありませんよね!
寒い冬、頑張って乗り切りましょうね!

タイトルとURLをコピーしました