フランスで過ごすクリスマス

By ドメストル美紀

いよいよノエルに向けてカウントダウンが始まりましたね。
今年のノエルは日曜日。翌日もお仕事の方にはお気の毒な暦ですがBon courage！
そう、日本では24日のイブにクリスマスを祝うことになっていますが、

フランスでは25日をメインにお祝いします。
そのほかにもフランスのノエルの認識は日本とは少し異なります。その辺を少し確認していきましょう。

« la fille aînée de l’Église »

この表現を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
1980年に元ローマ教皇のヨハネパウロ2世（ Jean-Paul II )がフランスを訪問された際に、 « France, la fille aînée de l’Église »と、フランスに対して『カトリック教会の長女（教会は女性名詞）』と呼びかけたことから頻用されるようになったフレーズです。実際この頃は、フランス国民の70％以上がカトリック教を信仰していたといいます。

でも、そのあとカトリック教……いや信仰を持たない人が増え、2019年には、51％の人が神を信じないと答え、カトリック教を信仰している人は32％まで減少しています。（Ifop調査）
宗教離れが加速しているフランスなのです。

それでもノエルは特別

このように宗教離れが進んでいるフランスですが、日本のキリスト教徒の数（１％未満）と比べると圧倒的に多いという見方もできます。そもそもフランスの祝日はそのほとんどがキリスト教暦に由縁するもの。ライシテ（公の場における宗教排除）を推しているフランスなのに意外ですよね。
でも宗主クローヴィスが5世紀終わりにカトリックに改宗して以来、教会と密接に歴史を紡いできたフランスです。今さら、フランスの文化、そして慣習からキリスト教の形跡を拭い去ることは難しいのでしょう。

ということで、ノエル。
Noël という言葉の語源はラテン語のnatalis dies=「誕生の日」からきています。この喜ばしい日までの流れを確認しましょう。

La veille ラ・ヴェイユ

ノエルへの準備は、実は約4週間前のアドベントから始まるのですが、もうここまで来てしまったので、そこはまた来年に回し、今回はラ・ヴェイユ（＝前夜、イブ）の過ごし方から行きましょう。

・深夜に教会のミサを与（あずか）ります（←カトリックはこのように言います）。真夜中過ぎにグロリア斉唱があり、イエスが誕生したことを喜ぶのです。が！　実際には子供の就寝時間のこともあり、夕方にもミサがあります。

・ミサには本来絶食して賜るべきもの。したがって深夜ミサを控えるラ・ヴェイユの夕食は軽めにします。肉は御馳走なので避け、スモークサーモン（十分高級品なんですけどね！）とマーシュのサラダなどで軽く済ませます。その代わり、ミサから戻ってから、ショコラショーとブリオッシュの夜食をいただくのです。

・ちなみに、信者でない方たちにも教会はドアを開いていますので、参列していいのですよ。コミュニオン（聖餐拝領）のときだけ遠慮されれば問題なしです。ノエルの讃美歌は、「きよしこの夜」や「もろびとこぞりて」など馴染み深いものが多いですし、コーラスのレベルも、教会によってはプロ級だったりします。

25日ノエル

・フランスではお昼にノエルを祝う家庭がほとんどでしょう。「家庭」と言いましたが、そうなのですよ。日本のように、ホテルやとっておきのレストランに、ディナーに出かける、ましてや彼女・彼氏で祝う、というものではないのです。家で、そしてとことん家族で祝うものなのです。もちろん、独り身の方や留学生などが周りにいたら招待しますよ。ノエルは、愛の日、分かち合う日ですもの。
プレゼントも25日の朝に開けます。

・ノエルの御馳走は、地方によって異なるようですが、主流は、前菜にフォアグラ、メインはシャポンという去勢された雄鶏に詰め物をしてローストしたものです。付け合わせには栗のソテーが人気です。
メインのあとのフロマージュは、もみの木肌で箱が作られていることからモンドールが選ばれること多し。
デザートは、ビュッシュ・ド・ノエルという、薪木に似せたケーキです。これはロールケーキ状ではあるのですが、日本のロールケーキのように生クリームたっぷりのふわふわケーキではなく、プラリネやガナッシュ、バタークリームなどを多用した、濃厚なケーキなのです。