ウィルスとクリスマス

フランス今週の時事コラム

今週の時事コラム

クリスマスが近づいている。わざわざ書かなくてもお気づきであろう。

特にフランスに暮らしていれば、ウィルス vs クリスマス の攻防が日々強くなっているのをピリピリと肌で感じるほどだ。経済面では師走はかき入れ時、文化面では家族3世代が一堂に会する聖なるイベントが待ち受けているため無理もない。

ちなみに、フランスでは、クリスマスには家族で帰省し大晦日には友人同士で集まってお祭り気分で新年を迎える。日本とはちょうど逆だ。

そのクリスマスに外出制限がどれだけ解かれるのか、昨夜カステックス首相から発表があった。

  • 12/15より夜間外出禁止令20時~6時
  • 日中の外出許可証・移動距離・時間制限は廃止
  • クリスマスイブの夜間外出禁止令は解除、大晦日は維持
  • 映画館・美術館・劇場・スポーツ施設・動物園は12/15再開せず更に3週間閉鎖

注目すべきは夜間外出禁止令がクリスマスイブには適用されないこと。つまり、大人6人までという奨励はあるものの、晴れて家族でパーティーが可能。大晦日は20時以降外出禁止。不特定多数でどんちゃん騒ぎされるとウィルス拡散のリスクがより高いからということだろう。

そのウィルス、なかなか去ってくれない。 「 Il faut sauver Noël ! クリスマスを救え」 を合言葉に10月から外出規制を敷き、レストランを閉め、商店も閉め、ブラックフライデーをずらしたというのに。クリスマスをみんなで祝えるように…

政府の頑張りは認める。が、何かが腑に落ちない。コロナ禍のはじめにマクロン大統領は言ったではないか。「健康はプライスレス la santé n’a pas de prix」なため「どのような代償を払ってでも quoi qu’il en coûte(←本の題名になるほど有名になった表現)コロナウィルスと闘う」と宣言したではないか。その言葉通り、(効果はさておき)ここ数カ月涙ぐましい努力もし、多くを犠牲にしてきたのではなかったのか。

それを、、、 。クリスマスというイベントのために、ウィルスがまだ下火にならないうちに移動や集まりを許し、感染率がぶり返すリスクを取るというのか。根本的には12月25日じゃなくても良いと思える行事のために…  この世界的な非常時、数千年に一回だけ、家族大集合の日程を例えば半年後に延期することはそれほどあり得ないことなのであろうか… 

こういうところで伝統・風習というものの重みをずっしりと実感する。そう簡単に動かせるものではないのであろう。おとといテレビ番組で、ベラン保健相は「クリスマスの集まりを禁止はしないが、祖父母と過ごす最後のクリスマスにしたいかどうか自問する良識を仏人は持っていると信じる」と述べ、大勢で集まらないよう暗に諭した。マクロン大統領も今朝「 Noël est entre nos mains クリスマスの運命は我々次第」とダメ押し

また最近、ドイツのメルケル首相やカナダのマニトバ州首相が涙声で「愛する家族を守るためにクリスマスシーズンは隔離してくれ」と国民に訴える姿があまりにも印象的であった。

何でも損得勘定ではないのは分かる。宗教観の違いも認識している。サンタクロース Père Noëlクリスマスの奇跡 La magie de noël を今こそ求める気持ちも痛いほど理解できる。それでも、 一国のトップが泣いて懇願するほどの状況であるのなら…。これまで払ってきた甚だしい物理的・心理的代価を考えたとき、tout ça pour ça ! なんやねん と感じずにはいられない。

by ambi for ParisJuku

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